青いバラの花言葉は「不可能」。
なぜなら、長い間、青いバラを咲かせることはできないとされていたからです。
生物大好き、くろーるです。
ところが、不可能とされていた青いバラを遺伝子組み換え技術によって咲かせることに成功しました。
遺伝子組み換え技術の進歩によって、生物界に不可能は無くなる日は遠くはありません。
しかし、自然の摂理を越える遺伝子組み換え技術が万能なものかは考える必要があります。
そのひとつの警鐘を書いたものが「小説版ジュラシックパーク」です。
遺伝子の組み換えによって、絶滅した恐竜を蘇(よみがえ)らせる「ジュラシックパーク計画」。
その「ジュラシックパーク計画」は、すでに感染症の撲滅実験として蚊に行われています。
扱った生物の規模は違えども、結末が現実になったときには、遺伝子組み換え蚊はより被害が大きいかもしれません。
遺伝子組み換え蚊がデング熱などの感染症を撲滅させることはできるのでしょうか?
「小説版ジュラシックパーク」で語られる生物の生存力を引用しながら、遺伝子組み換え蚊の今後を考えてみました。
遺伝子組み換え蚊による感染症撲滅実験とは?
デング熱やジカ熱・マラリアなどを媒介する蚊。
ネッタイシマカや日本在来のヒトスジシマカが知られています。
感染症ウイルスが広がっていく仕組みです。
感染症にかかった人の血液を蚊が吸う。
↓
蚊の体内で感染症ウイルスが増える。
↓
無感染の人の血液を蚊が吸う。
↓
無感染の人に感染症ウイルスが入り感染する。
また、人の血液を吸うのはメスの蚊のみです。
オスの蚊は、花の蜜を吸って生きています。
遺伝子組み換え蚊は、すべてオスで作られます。
この遺伝子組み換え蚊のオスと交尾したメスの蚊が生む幼虫は、成虫になることはできません。
感染症を媒介する蚊が成虫になることができない状態となることで、蚊が減っていき、最後は絶滅するという計画になるのです。
実際に2013年にはブラジルで、遺伝子組み換え蚊が放たれ、ネッタイシマカの減少を観察する実験が行われています。
実験によりブラジルのネッタイシマカの減少が確認されています。
しかし、現在では実験前の数までネッタイシマカは回復していることも確認されました。
ネッタイシマカのメスが遺伝子組み換え蚊との交尾を避けていることが原因と考えられています。
同様の実験がアメリカ合衆国フロリダ州で承認され、2021年から実験が開始される予定です。
遺伝子組み換え蚊を自然に放つことの危険性を「ジュラシック実験」といって、反対する地元の住民団体があります。
「ジュラシック実験」というわけは、小説版・映画版でも知られる「ジュラシックパーク」に描かれた惨劇を指しているのです。
特に私も読んだ小説版ジュラシックパークでは、自然における生物の対応力の高さがジュラシックパーク計画を崩壊させていきます。
そして、自然における生物の対応能力が人間の想定を簡単に超えてしまうことは理論によっても裏付けされています。
日本由来の蚊も危険な外来種!?→「影響は世界へ!生息地拡大!感染症を広げる日本在来ヒトスジシマカ」
小説版ジュラシックパークを知らない人のために簡単に!
パニック小説の書き手として知られるアメリカの小説家マイクル・クライトンによって1990年に発表された小説が「ジュラシックパーク」です。
恐竜が地球を支配していた白亜紀に生息していた蚊の血液から、恐竜のDNAを取り出し恐竜を現代に蘇らせます。
蘇らせた恐竜たちをサファリパークのように整備した島の中で見学するテーマパークにしようと計画します。
「ジュラシックパーク」開園の前に、恐竜学者などを呼びその評価をしてもらう機会を作ります。
しかし、そのときに次々と予想外のアクシデントが発生し、肉食恐竜たちが襲いかかるという小説です。
1993年には、スティーブン・スピルバーグによって映画化もされ、大ヒットとなりました。
映画版のジュラシックパークも息をつかせぬ展開で面白いですが、小説版ジュラシックパークは当時の最新テクノロジーを紹介しながら、恐竜復活を現実的にさせています。
さらに、ジュラシックパーク計画が崩壊していく過程を、登場人物のひとり数学者のイアン・マルカムが説明する理論によって語られるところにも説得力があります。
数学者イアン・マルカムが語る理論を引用しながら、遺伝子組み換え蚊の実験を考えてみます。
イアン・マルカムの警鐘―ジュラシックパークと遺伝子組み換え蚊
ジュラシックパークの登場人物で数学者イアン・マルカムはカオス理論の信奉者(しんぽうしゃ)でもあります。
カオス理論をビリヤードを例にして説明をしているシーンから引用します。
本来であれば、綿密な予測によってビリヤードのボールの動きは予測が可能なはずです。
しかし、ビリヤードの試合では必ずそうような結果にはなりません。
なぜか?
「数秒と予測できないんだよ。なぜなら、ボールを突いた直後に、ごくごく微妙な効果によってーボールの球面の不完全さ、ビリヤード台の微妙なくぼみなどによって-ずれが生じはじめるからだ。そのずれが入念な計算を凌駕(りょうが)するのに長くはかからない。したがって、このビリヤード台のボールという単純なシステムは予測不可能となる。」(ジュラシックパーク(上)より引用)
これがカオス理論の本質です。
見た目にはわからない、または、感じることもない誤差(ごさ)によって結果が全く変わってしまうことを示しています。
バタフライ効果も同じことになるでしょう。
遺伝子組み換え蚊の実験においても、メスのネッタイシマカがオスの遺伝子組み換え蚊との交尾を避けていることが考えられています。
おそらく、ネッタイシマカのメスが危険を感じるもの、例えば匂いや動きなどがあるのでしょう。
ジュラシックパークで生まれた恐竜は、遺伝子操作によりある物質を摂取しなければ、弱ってしまうようになっていました。
そのため、例え恐竜がジュラシックパークを脱走しても、12時間ほどで衰弱することになっていました。
「進化の歴史とは、生物が障壁の外へ出ようとする行為のくりかえしにほかならない。生物は必ずその障壁を打ち破る。そして、新しいテリトリーへ進出していく。それはつらい過程だろう。危険すらともなう過程だろう。だが、生物は必ず道を見つけだす」(ジュラシックパーク(上)より引用)
イアン・マルカムのいう進化の考えは、遺伝子組み換え蚊が新たなステージへ進化する可能性を示しているといえます。
地球上の生物が生き続ける最大の使命は、子孫を残すこと。
メスのネッタイシマカから交尾を避けられる遺伝子組み換え蚊は、子孫を残すために繁殖をする必要があるのです。
自滅するために繁殖をすることは、自然の法則に反しています。
自らが繁殖できる蚊に進化するのか、もしくは遺伝子組み換え蚊と交尾をする蚊を求めて繁殖地を変えるのかもしれません。
新しい繁殖方法を生み出すことも考えられます。
もしそれが、人の体に卵を産みつけることだったら・・・・・
感染症を撲滅するはずが、さらに大きな害を人にもたらすかもしれないですね。
「あんたは短期間で多数の恐竜を創りだした。なのに恐竜のことをなにも学ぼうとせず、自分の都合のいいようにふるまってくれることを期待した。なぜなら、自分が創り主であるがゆえに、恐竜を自分の持ち物であると思っているからだ。あんたは恐竜が生き物であることをわすれている。独自の知能を持っていて、あんたの都合のいいようには動かないことから目をそむけている。」(ジュラシックパーク(下)より引用)
イアン・マルカムがジュラシックパークの創設者ハモンドに、ジュラシックパークで起きている惨劇(さんげき)の責任を追及(ついきゅう)する際の言葉です。
遺伝子組み換え蚊も自分の知能か本能で考えて、進化を続けます。
自然の中に放つということは、少しのずれがどんどん大きくなり、監視することすらできなくなるのです。
遺伝子組み換え作物や遺伝子組み換え生物のすべてが悪者ではありません。
これから迎えるであろう地球規模の食糧不足の備えとして、遺伝子組み換え生物の必要性は大きくなっています。
しかし、自然の中の予測不可能な世界へ人間に作られた生物が放たれることは、リスクを感じます。
そのリスクは、創造主である人間へ返ってくることは大いにありえるのです。
「これからも自然のコントロールなどはできっこない。ものごとを混同するな。船は造れても海は造れない。飛行機は造れても空気は造れない。あんたの力は、自分で夢想しているよりはるかに貧弱なんだ。」(ジュラシックパーク(下)より引用)
まとめ:遺伝子組み換え蚊は失敗例!小説版ジュラシックパークが予想した未来
技術立国として日本は世界に名だたる国となりました。
しかし、阪神大震災や東日本大震災、毎年襲う台風や豪雨による大災害にも見舞われています。
度重なる外来生物の侵入と定着は、グローバル化の副作用ともいえます。
そして、大災害も外来生物も“想定外のできごと”といわれていますが、すべては人間の考えを自然の力が越えることを意味しています。
遺伝子組み換え生物により、人間にとってより良い環境・より良い経済活動を得ようとするとき、自然はいつもその意図を凌駕(りょうが)してくるのです。
遺伝子組み換え蚊によって、もし感染症のない世界が生まれたとしても、きっとその副作用は人間にとって大きな脅威になるのかもしれません。
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