学生時代は落語研究会(通称、落研)におりました、くろーるです。
誰にだって″初めて″はあります。
最初から笑える落語ができるわけではありません。
ですが、初めて落語を演じる人にありがちな注意点があります。
自分が後輩の稽古を見ているときに注意していた「あるある」をまとめてみました。
これだけ改善するだけでも、あなたの落語は格段に面白くなりますよ!
セリフをつまづくは致命的!何度も稽古して解決するしかありません!
落語の演目のセリフを覚えて、つまづかなくなるまで稽古をする!!
当たり前ですが、これが一番大事なことです。
″セリフをつまづく″ことは、見ている人の気持ちをその度にリセットしてしまいます。
いくら面白いことをやっても、話を盛り上げても、セリフをつまづいた瞬間に見ている人は冷静になります。
人間の感情って、けっこう単純なんです。
セリフのつまづきを無くすことに早道はありません。
ひたすら稽古を繰り返し、セリフを体に覚え込ませるだけです。
一度身につくと、簡単には落語のセリフは忘れません。
落語をやってみたいと思うなら、気合を入れて覚えましょう!
面白いことをするのですから、意外と楽しくできるものです。
ここから先は、セリフは完璧に覚えているのに笑ってもらえない悩みに答えます!
聞き取りやすいセリフにするために語頭にインパクトを置く
落語のセリフが聞き取れない原因のひとつに、″はっきりとセリフをしゃべっていない″ということがあります。
セリフの最初、いわゆる語頭をはっきりしゃべるための練習を目的とした小話を紹介します。
旦那「定や、定吉。ここに釘が出ていて危ないから、お隣行って金槌借りといで。どうした貸してくれたか。」
定吉「はい、それがその・・・貸してくれないんでございます。」
旦那「どうして?」
定吉「はい・・・お隣行って金槌貸してくださいと申しましたら、金と金とがぶつかって金槌が減るから貸せない、こう申すんでございます。」
旦那「ん~言いやがったな!借りんな、借りんな!うちのを出してお使い。」
この小話は「ケチの釘」といわれる、うちの落研では1年生の練習用です。
特に後半の定吉のセリフにある「金槌」「金」とセリフの頭に”か″が続くところがあります。
この″か″の部分にインパクトを置いて、″か″をはっきりと言う練習をします。
頭の言葉が聞こえるだけで、セリフは聞き取りやすくなります。
セリフの後ろが少々聞えなくても、見ている人は想像して補完ができるからです。
ところが逆に、セリフの頭が聞こえないと補完するのにかなりの時間がかかります。
その間にも、話はどんどん進んでいき、面白さが半減していくことになるのです。
実際の落語の中でも、言い回しがしにくい箇所や話のポイントになる箇所では、この″語頭にインパクトを置く″方法は効果的です。
セリフを塞ぐ仕草を避けて聞き漏らしを減らす
話が理解できなければ、笑いも起こらないのは当然のこと。
なのに、しゃべるときに仕草でわざわざ口を塞いでしまう人がけっこういます。
特に多いのは、ヒソヒソ話をするシーンです。
口元に手をあててヒソヒソ話す表現をしますが、このときに見ている人に対して口を塞いでします側の手を使ってしまうことがあります。
また、「後ろを振り返って話す」「大声で呼びかける」といったシーンでも似たような現象があります。
後ろを振り返るシーンで、本当に振り返ってから話しては、セリフ全部が真後ろへいってしまいます。
だから、横から少し後ろに向く感じでセリフを言うようにします。
″後ろを振り返りましたよ″という様子が、見ている人に伝われば十分です。
セリフが見ている人に聞こえることを優先しましょう。
さらにもうひとつ。
大声で呼びかけるシーンでは、両手で口を覆うことがあります。
確かに、前を向いているのでセリフが聞こえないとはなりません。
しかし、籠った声になって聞きにくくなるのです。
口に添える手は、片手だけで十分です。
これも、″大声で叫んでますよ″という様子が伝わればいいのですから。
落語のアクションをオーバーにするだけで見ている人の感情は動く
仕草をオーバーに表現するだけで、今まで笑いの起こらなかった箇所でも笑いが起きます。
私の実体験をお話しします。
初めて覚えた落語の演目は、桂文治師匠の『豆屋』という話でした。
演じる時間は10分程度の短い演目で、笑えるポイントも限られています。
『豆屋』の中に、厠(トイレ)から出てきた人が驚くシーンがあります。
自分では笑えると思えた箇所なのですが、稽古を見ている落研部員からは笑いが起きません。
試行錯誤を繰り返した結果、驚くと同時に大きく手を挙げることにしました。
すると、今まではクスッともしなかったのに、爆笑シーンに変わったのです。
これ以降、仕草のシーンはオーバーに動くように心掛けました。
腕の上げ下げならば、高低差がつくように。
大声をかけるならば、身を乗り出して。
大げさな仕草をすることで、その姿が見ている人に滑稽に見えるのだと思います。
そして、大きく感情を揺さぶることで笑いにつながると考えています。
高座では見ている人の気を逸らす貴金属はつけない
高座に上がる時は、メガネ・時計・指輪・ピアス・ネックレスなどの身に着ける貴金属を外すようにします。
時計や指輪などが照明で光ると、見ている人はそこに目がいき気が散ります。
話の内容に集中できないのです。
メガネについては、他の貴金属同様に光るという点と仕草中にズレてきてメガネを上げる動作が気を逸らせます。
落語家さんでもメガネをしたまま高座に上がる人はいます。
でも、それは話に引き込む実力があるから良いのです。
初心者は、見ている人ができるだけ話に集中できるように邪魔になる要素は省きましょう。
また、メガネを外すとお客さんの顔も見ずらくなるので、表情もわかりにくく、緊張もやわらぎます。
私も普段はメガネをしているので、高座にあがるときに外すと、話に集中できるというメリットもあります。
貴金属はつけずに高座に上がるようにしましょう!
笑いが収まる余裕をもつ
この章は、初めて高座に上がって落語を演じる人は、一度飛ばしてください。
何度か高座に上がって、お客さんを前にしてから読んでもらえると助けになると思います。
落語を演じることに少し慣れてくると、笑いを取れるようになってきます。
そうはいってもまだまだ高座で余裕があるわけではありません。
覚えた演目のセリフを話すことに精一杯になりがちです。
爆笑となるとお客さんの笑い声で、場内は何も聞こえなくなります。
誰も聞こえない状態の中、セリフをしゃべり続けると面白いポイントも聞き逃してしまいます。
笑い声が少し収まるのを待って、次のセリフを話し出すようにしましょう。
見ている人の顔は見なくてもいいので、笑いの状態は気にできるようになると、さらに笑いをとれるようになります。
まとめに:見ている人のことを考えて稽古をするといい演者になれます!
落語の稽古には欠かせない道具が鏡です。
自分の演じている姿を見ながら、悪い点を改善するためには不可欠です。
落語を演じるには、自分一人では完成しません。
見てくれる人がいて、見てくれる人が笑ってくれて、初めて完成するのが落語です。
だから、見ている人が面白く感じるセリフ回し・仕草を考えます。
見ている人の視点を常にもって稽古をすると、自然と面白い落語を演じることができますよ。
独りよがりの落語にならないように気をつけましょう!