学生時代は落語研究会におりました、くろーるです。
落語はお年寄りの娯楽というのは、今は昔。
お笑い好きだけではなく、言葉の勉強にもなるとアナウンサーまでが落語を聞く時代になりました。
とはいえ、子供に落語を聞かせるのは、まだまだハードルが高い・・・
落語といえば・・・
・言葉づかいが聞き慣れない
・話が長くてつまらない
・意味のわからない言葉が多数出現
大人だって聴いているのが苦痛ですからね。
でも、落語の演目は古今東西無限です!
そこで、落語研究会・通称落研(おちけん)出身の私が厳選した、子供ウケ間違いなしの演目をご紹介します!
話が短くてわかりやすい!それでいて、面白い!
子供だけではなく、落語初心者にもぜひ!!
ダジャレだから子供ウケもバツグン!口癖になる落語『 つる 』
本編時間 | 笑い度 |
約10分 | ★★★☆☆ |
「つる」という演目は、私の在籍していた落語研究会では1年生が演じる演目のひとつでした。
要は、演じやすい話だということです。
「登場人物の少なさ」「話の短さ」「内容の簡潔さ」と、わかりやすい要素が盛り込まれています。
笑うために見る・聴く落語として、初めてでもすぐに楽しめる演目といえるでしょう。
ココがみどころ!!
ご隠居さんがいう鶴の名前の由来とは「“つ~”と鳴いて飛んできた鳥と、“る~”と鳴いて飛んできた鳥が、ひとつの木に一緒に留まったので“つる”なんだ」。
そうです、単なるダジャレです。
話の中でオチができているところもオモシロポイントになっています。
大人も子供も、おもわず言わずにいられない・マネしたてみたいと思わせる、クセになる演目なんですね。
子供ウケ間違いなしの演目です。
私は桂歌丸師匠の軽快な口調の「つる」をおすすめします。
あなたは本当の意味を知って読み聞かせしていますか?落語『 桃太郎 』
本編時間 | 笑い度 |
約10分 | ★★★☆☆ |
「桃太郎」といえば、子供からお年寄りまで誰もが知っている昔話のド定番ですよね。
でも、この演目で犬や猿やキジ、ましては鬼が出てくることはありません。
登場人物は、お父さんと子供だけ。
見ているものにとって、登場人物が少ないことは理解がしやすいことにつながります。
昔話「桃太郎」を語って、父親らしく子供を寝かしつけようというのが本筋です。
ところが、逆に子供に知識マウントをとられるという、ありがちなオチ。
ココがみどころ!!
子供にとっては馴染み深い演目であることで、一気に興味もそそられるでしょう。
この桃太郎の話は、大人でもタメになるストーリーになっています。
中国の故事などを引き合いに語る子供に、自分もおもわずうなずいているはずです。
聴いているだけでも勉強になる気分にさせてくれますよ!
急がば回らにゃ短気は損気!落語『 長短 』
本編時間 | 笑い度 |
約15分 | ★★★☆☆ |
“短気は損気”といって、昔から短気な人は損をするなんていいます。
といっても、早いことが最重要のIT時代にあっては、のんびり事を構える方が勝機を失いそうです。
短気の短七と気の長い長さんが登場する落語「長短」では、どちらが損をするのでしょうか?
ここに出てくる長さんは、戦場カメラマン・渡部陽一もびっくりするほどのんびりとしゃべります。
一方で、生粋の江戸っ子の短七がまくしたてる江戸弁。
“のんびり”長さんと“早口”短七のふたりの掛け合いが、なんとも笑いを誘います。
ココがみどころ!!
長さんののんびりした会話にイラついたがために犯してしまう短七のミスが途中で発生します。
オチへつながる重要な場面なのですが、見ているあなたはそれに気づけるでしょうか?
演者の演じ方によっては、あえて気づかせないこともありますので、見逃さないようにすると面白さが倍増しますよ!
15分もあるとは思えないコンパクトにまとまった演目ですので、お子さんや落語を初めて見る人でもあっという間に感じることでしょう。
情熱愛とサスペンス!どちらの解釈がお好き?落語『 千早(ちはや)振る 』
本編時間 | 笑い度 |
約15分 | ★★★★☆ |
タイトルにもある「ちはやふる~」から始まる歌は、百人一首の中でも超有名な歌です。
百人一首の競技カルタにかける高校生たちの物語、漫画「ちはやふる」でもタイトルにもなりましたし、主人公のもっとも得意な札でもあります。
では、この歌がどんな情景を歌っているかというと・・・・・
ちはやふる 神代もきかぬ 龍田川 からくれなゐに 水くくるとは(百人一首17番・在原業平朝臣)
【訳】神の時代でも聞いたことがなかったであろう。龍田川を紅く埋め尽くした紅葉が水をくぐる美しい様子を。
少々言葉足らずの解釈ですが、相手の女性の美しさを秋の紅葉の景色になぞらえたものです。
平安時代のプレイボーイ・在原業平(ありわらのなりひら)の詠んだ情熱的な愛の歌、それが「ちやはふる」なのです。
ココがみどころ!!
落語「千早振る」の中では、百人一首の内容は触れられていません。
誰だって知ってる内容だろうという前提で話が進みます。
この演目ができた当時は、それほど有名な歌であったのでしょう。
今は百人一首をする習慣も少なくなっていますので、できれば元歌を知った上で落語を聞いてもらうことがベスト!
とはいえ、知らなくとも十分に面白い構成になっていますので、まずは聞いてみてください。
ご隠居さんの語る韓国ドラマも驚きのサスペンスラブストーリー「千早振る」に悶絶すること間違いなし!
私も元歌は知らずに落語「千早振る」を聞いて、逆に百人一首に興味をもったひとりですのでご心配なく。
見た目に騙されると解けない数学問題の典型!落語『 壺算(つぼざん) 』
本編時間 | 笑い度 |
約15分 | ★★★★☆ |
算数の授業で“つるかめ算”とか“植木算”とかを習ったことを覚えていますか?
ものを早く計算するための代表的な速算式です。
それに比べて“壺算”は、相手の計算する頭脳をマヒさせる「迷算式」。
話の筋は通っているけど、計算は合わないという迷宮のような計算をさせられます。
本当のポイントは計算式ではなく、「下取り」か「返品」かってところなんですけどね。
店の主人もおそらく会計には弱いと見えます。
数学の入試問題でも、見せかけと問いの狙いが違うものってよくあります。
聞いてる方も、ちょっと油断をすると源さんの計算が合っている気がしてくるからご用心!
あなたもダマされてはいけませんよ!
百人一首をリスペクトした最高のオチを聞き逃すな!落語『 崇徳院(すとくいん) 』
本編時間 | 笑い度 |
約15分 | ★★★★☆ |
平安時代後期の天皇のひとりである崇徳院。
歌の詠み手としても知られており、百人一首に選ばれているこの歌も、大変情熱的な恋の歌です。
とっても情熱的な恋愛歌!百人一首が好きになってしまいますよ!
瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ(百人一首77番・崇徳院)
【訳】川の早い流れが岩によって割られるように私たちも離れ離れになろうとも、川の流れも元に戻るようにいつか再び逢いたいと思います。
こんな歌を相手から送られたら、思わずグラッと心が動いてしまいますよね。
若旦那が恋患いになってしまう気持ちもわかります。
″ちはやふる~″にしても、この崇徳院の歌にしても、百人一首を恋愛歌から学んでみると興味が湧きますよ!
平安時代の人だって、恋愛のせつなさ、甘酸っぱさは変わらないのです。
話の筋は、若旦那のひと目惚れ相手を探してのドタバタですが、注目はオチです。
崇徳院の歌を用いたラストは、おそらく落語演目の中でも有数の美しいオチだと思います。
子供はみんなオナラが大好き!落語『 転失気(てんしき) 』
本編時間 | 笑い度 |
約15分 | ★★★★☆ |
まずは、最初にネタバレです。
転失気(てんしき)って、オナラのことだよ!
「転失気=オナラ」のことですが、いわゆる隠語になっています。
隠語とは、ある特定の人にだけ意味が伝わる隠し言葉や暗号といったところでしょうか。
和尚さんを診察した医者は、てっきり知ってものとして話したのですが、和尚さんは知らなかったわけです。
転失気を知ったふりをする大人たちが次々と登場。
転失気を食べた人や転失気を飾ってある人が出てくるのですから、クスクスせずにはいられません。
子供はみんなオナラが大好き!!
なんなら“オナラ”だけで、ずっと笑っていられます。
“てんしき”が何かがわからないまま進む前半パートに、少し飽きがあるかもしれませんが、オナラであることがわかってからの笑いの破壊力はスゴイものがあります。
10分強くらいの長さ演目ですが、下ネタ話って時間を感じさせないものですよね。
ヘン顔は怪しい人の代名詞!表情必見の落語『 にらみ返し 』
本編時間 | 笑い度 |
約20分 | ★★★★☆ |
落語は聞かせるものが多い印象をもっているかもしれませんが、この「にらみ返し」は顔芸が最大の面白さになっている演目です。
ラジオやCDでは、その面白さが全く通じません。
だって、借金取りがやってきても一言もしゃべらず、にらんで追い返すというプロが出てるのですから。
演じてる間にも、シーンとなる場面が何度も出てきます。
ひたすら、にらみ顔が続くというカオスな世界をお楽しみください。
子供に難しい言葉や風景が一切ないことも、おすすめポイント。
ヘン顔を見て、ずっと笑っていられる落語です。
まとめに:子供ウケが悪い大ネタや名人の落語
落語好きであるほど、名人の落語や大ネタを好きな演目にあげることと思います。
確かに、芸の細かさや表現力、笑いの完成度の高さは素晴らしいものがあります。
いいものを子供にも聞かせたいという気持ちもわかります。
ただ、音源が古くて聞き取りにくかったり、江戸言葉が聞き取れないなど、子供の興味が続かない状況が生まれるのです。
むしろ、現在活躍中の落語家さんの音源を探してくるなど、聞き取りやすいものを選んで、子供に聞かせることがいいでしょう。