学生時代は落語研究会におりました、くろーるです。
コミュニケーションの模範として、言葉選びの練習として、注目が集まっている落語。
聞くだけではなく、自ら演じてみたいと思う人もいるかもしれません。
でも、ちまたで見る落語は大ネタといわれる難しいものばかり。
そこで、初心者でも演じやすい演目を落語研究会所属だった私が選んでみました。
演目選びのコツもご紹介します!
初心者が演じやすい演目選び5つのポイント
落語という演芸は、簡単にいうと一人芝居です。
講座の上で、しぐさを最小限にして何人もの人物を演じわけ、情景を見ている人に想像させ、さらに笑わせる。
これをすべて一人でやります。
逆をいえば、
- しぐさが少ない
- 演じる人物が少ない
- 情景が少ない
- 笑わせる必要がない
- 本編の時間が短い
このポイントを押さえた演目であれば、初心者でも演じやすい演目ということになります。
見ている人を飽きさせないためにも、最初は短めの演目を選ぶことも大事です。
ご紹介する演目も、この5つのポイントを考慮してますよ。
各演目ごとの演じる要点も解説していきます!
話も笑いも人物もシンプルな落語「つる」
登場人物 | 3名 |
本編時間 | 約10分 |
落語「つる」に登場する人物は、八五郎とご隠居さんの他、あとから金ちゃんが登場する3名です。
ただ、3名同時に登場することはなく、八五郎とご隠居さん・八五郎と金ちゃんの組み合わせで掛け合いがあります。
ご隠居さんは、そこそこの高齢と考えられますので、セリフを少しゆっくりめに話すなどで演じ分けは簡単です。
八五郎と金ちゃんは同年代と考えられるため、声のトーンなどは似ているでしょうが、金ちゃんは仕事が忙しく、八五郎の話を聞くようなヒマはありません。
ちょっと気だるいような、苛立つような感じで演じることで違う人物になります。
八五郎が「つる」の由来を間違える最後のパートが重要です。
気を抜くと間違わずに言ってしまうことがありますので、要注意です!!
本編はおおよそ10分弱くらいですので、聞いている方も飽きない配分時間です。
この落語「つる」は、どんな場面でも使いやすい演目なため重宝します。
学校や会社の出し物・結婚式や老人会での余興など、タブーな要素がないことも魅力のひとつです。
覚えておいて損の無い演目ですよ!
「つる」の名前の由来を八五郎が間違うところが要練習です!
落語「つる」は、桂歌丸師匠もオススメですが、柳家一琴師匠の落語「つる」はセリフが聞き取りやすく、クセも少なめです。
初めて演じるときは、とても参考になると思います。
違和感なく子供が子供を演じることができる落語「桃太郎」
登場人物 | 4名 |
本編時間 | 約10分 |
落語「桃太郎」の登場人物は、正確には3人。
でも、冒頭に出てくる父子は、あくまで前座でしかありません。
そのため、実際に演じる必要があるのは、本題である教養の少ない父親と学に長けた子供の2人です。
昔話「桃太郎」の筋に沿って、その意味や由来をほとんど子供一人で語り続けます。
父親もだいたいは相づちを打つだけです。
日本人なら万人が知っている「桃太郎」ですから、
「へぇ~、そんな意味があったのか~」
と興味を引く点は、初心者が演じても関心を惹き続けることができます。
子供の話にだんだんと興味を持ち始める父親が、演じる上で重要なポイントです。
父親が徐々に身を乗り出すように演じるといいですよ!
言い回しだけで人物の演じ分けができる落語「長短」
登場人物 | 2名 |
本編時間 | 約10分 |
人物の演じ分けがとてもしやすい落語「長短」
登場人物は2名だけで、しかもゆっくり話す長さんと早口の短七というはっきりした人物像です。
ただ、短七を早口で話すようにしないことが重要です。
長さんは、ゆっくりと話すことで気が長い人物を演じます。
″セリフが聞き取れない″というのは、落語にとってはかなりの致命傷。
何を言っているかに気を取られてストーリーが疎かになり、笑うポイントを逃すことになります。
そこで、短七のセリフはフツーのペースで話してかまいません。
早口を表現する方法としては、息継ぎの回数を減らすことで演出できます。
文章にすると「、」を打つ部分を、「、」を打たずに読むと考え話すとうまくいきますよ。
もちろん、長さんはゆっくり話してもセリフは聞き取れるので問題無し。
これで十分に短気な短七と気の長い長さんが演じられます。
たばこを吸う仕草がありますが、ここも演じるポイントはセリフと同じです。
仕草も何をやっているか見ている人がわからないと、見ている人の集中力を削ぎます。
結果、笑うところを逃してしまい、笑いにならない状況が生まれますよ。
短七のセリフ・動作は普通に、長さんのセリフ・動作をゆっくり演じましょう!
セリフをいうだけの言葉遊びで笑いが起こる落語「千早振る」
登場人物 | 2名 |
本編時間 | 約15分 |
登場人物がご隠居さんと男の二人だけで演じ分けがしやすい落語「千早振る」。
これといった仕草もなく、二人の掛け合いだけが続くため、話を覚えてしまえば簡単です。
知ったかぶりをするご隠居さんが、アドリブで話を作っていくため、それを気付かれないようにと大げさな表現をするようにしましょう。
話全体に抑揚がついて、見ている人が飽きません。
ご隠居さんが関取や花魁を大げさに表現すると面白くなりますよ!
仕草を取り入れたネタならこの落語「ちりとてちん」
登場人物 | 3名 |
本編時間 | 約15分 |
登場人物も少なく、話の流れもいたってシンプルな落語「ちりとてちん」。
後半の″腐った豆腐″を食べるシーンが見せ場です。
食べれるようなものではないのに、美味しそうな表情を無理やり作り出すところに面白さがあります。
″豆腐を食べる″という仕草があるものの、細かい仕草の描写がなくても見る方には伝わりますので、思うがまま演じても問題ありません。
ちりとてちんを食べる男を、ドタバタ演じるくらいがちょうどいいと思います。
初心者が演じるには意外に難しい演目
ここでは「初心者が演じるには難しい演目」を、私なりの視点でご紹介します。
私の紹介する難しい演目は、簡単にいうと″初心者が笑いをとりずらい″という意味です。
ですので、初心者でも演じやすい演目も含まれています。
登場人物の多さが初心者には難問の落語「まんじゅうこわい」
子供にも人気のある演目で、話もシンプルなのですが、なんといっても登場人物が多い。
「まんじゅうこわい」をはじめとした長屋を舞台にした通称「長屋ネタ」は、共通して演じ分けが難しいところです。
誰が話しているのかがわからないと、お客さんが内容に集中できために笑いにつながりません。
「粗忽長屋」や「長屋の花見」などがあります。
子供の可愛さと憎らしさを表現できるか!?落語「初天神」
子供が主役のネタも初心者には人気があります。
「初天神」もそのひとつですが、可愛げを維持しつつ、憎たらしい子供を演じることは意外に難しいものです。
また、終盤に出てくる団子を食べるシーンも、簡単そうに見えて難易度が高いところです。
艶めかしさを出すと笑いにならない「花魁ネタ」「艶笑ネタ」
落語の演目には遊郭が舞台のものも多くあります。
子供が演じるのはもちろんのこと、女性が演じることも避けるべきなのが「花魁ネタ」や「艶笑ネタ」です。
花魁や妾を女性が演じると、色っぽさが出過ぎて笑えなくなります。
下ネタばかりだと笑えないのと同じ効果があります。
また、子供に″大人の女性″と演じさせるのは無理があります。
なんといってもセリフの意味を理解すること自体が難しいからです。
「紙入れ」「短命」が知られていますね。
まとめに:自分が見て面白かった演目は誰が見ても面白い
5つのポイントを基準にして、そのポイントを極力揃えた演目を選んでいます。
しかし、この他にもこの5つのポイントを揃えたネタはたくさんあります。
私がもうひとつ重要にしているポイントは、″自分が見て面白かった演目″です。
落語は、やはり見ている人に笑ってもらうことがもっとも大切だと思います。
だからこそ、「自分が面白い!」と思った演目でなければ、見ている人を笑わせることはできません。
落語研究会の同期仲間でも、稽古をしたくないために短い演目を選ぶものもいました。
でも、本人は必ずしも面白いと思って選んだわけではないので、口座で演じてもウケません。
自分が楽しいと思える講座は、不思議と演じ方が面白くなってくるものです。
ぜひ、5つのポイントと照らしわせながら、自分の好きな演目を見つけてください!