学生落語研究会に所属していた、くろーるです。
落語の名人といわれる落語家の芸は、見ても聞いても感心してしまうものです。
でも、それは多くの落語を見てきたからこそ感じるもの。
ファストものが流行る時代に、長くてスローな展開になる落語は、初心者にはわかりにくい芸能といえます。
まずは、見ている人の心をつかみ、グイッと本題へ引き込む!
ファスト時代にこそ活きてくる、速攻で笑わせる落語家をご紹介します。
落語ビギナーでも、きっとファンになります!
醸し出す色気で仕立てる女性キャラに魅了させる春風亭一之輔(しゅんぷうていいちのすけ)
醸し出す色気とテンポ良い展開が魅力の春風亭一之輔師匠。
個人的には、おかみさんが出てくる演目が好みです。
というのも、落語に出てくる女性のキャラを男性が演じるには、色気の出し具合が難しい。
その点、一之輔師匠は元から持っている色気を、上手に壊して女性キャラを仕立てます。
あまり花魁が出るような艶笑話は好きではないのですが、一之輔師匠は別格。
子供に楽しんでもらうことも考えると、おかみさんがキーになる演目が面白いと思います。
おかみさんキャラの立つ演目をご紹介!
落語「天狗裁き」
いろいろな人物が登場する落語「天狗裁き」の中でも、最初と最後に登場するおかみさんがキーマン。
前半のストーリーを作りつつ、オチの締め方にも関わってきます。
口煩くてやかましく、それでいて主人公が惚れた女性であることが伝わってくる、そんな女性を演じられるのは一之輔師匠だと思います。
落語「天狗裁き」に彩を添えて、艶々した演目になっていますね。
型破りながらも正統派古典落語の名手・柳家喬太郎(やなぎやきょうたろう)
正統派の型破り落語の名手としてご紹介したい柳家喬太郎師匠。
一見盛り上がりに欠ける演目こそ、絶妙なアレンジや演じ分けで大爆笑にしてしまいます。
喬太郎師匠といえば、創作落語である「コロッケそば」が有名です。
古典落語として知られた「時そば」をモチーフにした傑作ですが、やはり聞いて欲しいのは古典落語。
“正統派”とタイトルしたとおりに、古典落語を面白くするテクニックに長けていると思うからです。
自分で今までスルーしてきた演目で、喬太郎師匠が演じたことで聞き直した演目が実に多いこと。
その中でもホラー系の演目には、喬太郎師匠ならではの“狂気の感情”は見て欲しいポイントです。
笑えるのに“狂気の感情”に恐怖する二題をご紹介!
落語「そば清」
全般的に抑揚の少ない演目だと思っていた落語「そば清」。
その印象をガラリと変えられたのが、喬太郎師匠でした。
テンポの良さとともに、そば食いの清兵衛さんが狂気に走り出す様に一見の価値があります。
自分の中で、無邪気に笑っていたはずが、いつのまにか引きつり笑いになる変化にゾッとします。
オチがおぞましく感じられるのも、喬太郎師匠の変化する笑いの為せる技だと思います。
落語「死神」
この演目は有名すぎるほど有名ですが、落語として成立しながら怪談話としてもオチる落差の激しさは、喬太郎師匠が唯一ではないかと思っています。
バッドエンドのオチが基本で、そこまでしっかり笑わせるほど、最後が引き立つはずだからです。
たくさんの演者による落語「死神」を聞いてきましたが、心が凍りつくほどの恐怖を覚えたのも喬太郎師匠の「死神」でした。
登場する死神自体が狂ってるんですから・・・
どんな人物にも心を通わせる至高の落語家・立川志の輔(たてかわしのすけ)
私が学生落研時代でもっともお世話になったといえる立川志の輔師匠。
自分のネタ探しのときには、必ず志の輔師匠の演目から探したものです。
志の輔師匠の演じ方は、しわがれ声に特徴があるものの、クセが少なくマネをしやすい。
だから、セリフから笑いの間まで、そっくりそのままパクっても爆笑間違いナシなのです。
つまりは、どんな演目も練りに練って、稽古に稽古を重ねた至高の演目になっています。
登場するキャラクターのひとりひとりに、丁寧な個性が見られ、お気に入りキャラクターになるほどです。
優しい声色のキャラクターも多いので、気持ちがやすらぐような落語が聞けますよ。
破天荒ながら正統派で多くの人に愛された名人・立川談志師匠のお弟子さんでもあるので、落語の出来に隙がないのかもしれませんね。
志の輔師匠お得意の創作落語と人情話をご紹介!
落語「バールのようなもの」
志の輔師匠は創作落語にはとても定評があります。
年末の恒例行事である交響曲「第九番」、通称「第九(だいく)」のコーラスを扱った創作落語「歓喜の歌」は、映画にもありました。
その創作落語の原点ともいえる演目が落語「バールのようなもの」。
清水義範先生の執筆したエッセイを元に創作されたこの演目は、志の輔師匠の代表作でもあります。
窃盗のニュースなどで聞く、犯人が使ったとされる“バールのようなもの”が何か?という話です。
私はこの落語「バールのようなもの」を一晩で10回も見たほど、その面白さに魅了されました。
典型的な言葉遊びのネタでわかりやすく、展開もシンプル。
落語「つる」にも似た形式なので、落語聞きはじめの初心者や子供にも向いている演目です。
落語「ねずみ」
志の輔師匠の落語の魅力のひとつに“優しさ”があります。
どんな登場人物にも、どこか情けをかけたくなる魅力が感じられます。
だからこそ、志の輔師匠の人情話には奥深さを感じるのです。
落語「ねずみ」は、人情度は高くありません。
でも、志の輔師匠が演じると、落ちぶれた主人と子供の心情が心に響きます。
悪役夫婦も、どこか憎めないキャラになっているところも志の輔師匠ならではだと思います。
一度高座にあがれば笑いの渦!上方落語の爆笑王・桂枝雀(かつらしじゃく)
江戸落語を中心にご紹介している私ですが、上方(関西)落語の名人をご紹介したいと思います。
笑いの理論派ながら、高座では縦横無尽な仕草で魅了する桂枝雀師匠です。
初めて枝雀師匠の落語を見た時には、なんて無茶苦茶な高座なのかと思わせられました。
着物をはだけてまでの仕草、ときには勢い余って横を向いてしまったり・・・
コロコロと変わる表情に、落ち着いて落語を見ている気分ではありません。
枝雀師匠に振り回されているといっても過言ではないでしょう。
しかし、そのひとつひとつが計算されたものなのです。
枝雀師匠は、落語のオチを4種類に分けたことや“緊張と緩和”が笑いを生み出すという理論を展開した落語家です。
つまり、ノリで演じる落語は無いということです。
まずは、マクラ(最初の小話)だけでも見ていただけたら、その面白さがわかると思います。
すでに故人であるため、ライブで見られないことが大変悔やまれます。
枝雀師匠の代表キャラが登場する演目をご紹介!
落語「代書」
今でいうところの行政書士、書類作成代行業者のところへやってきた男と業者との掛け合い話です。
言い違いや聞き違いによる、典型的な言葉遊びの演目で、私がもっとも好きなジャンルでもあります。
あわて者で自己中心的な人物・松本為五郎は、枝雀師匠のハチャメチャ落語を代表するキャラ。
一度見ただけで、強いインパクトを与えるはずです。
松本為五郎にかき乱される代書屋さんが見もの。
この落語「代書」に出会わなければ、上方落語に興味をもつのは、もっと遅かったと思います。
それほど、衝撃的な笑いを与えてくれた演目なのです。
まとめに:落語の世界に引き込むために必要な強いインパクト
「落語はドラマと一緒」というのが持論で、最初の伏線やアプローチをしっかり見ておかないと、後半の笑いにはつながりません。
漫才やコントのように短い時間で展開できない落語は、子供や初心者にはとっつきにくい演芸といえます。
この記事でご紹介した落語家は、最初のインパクトで世界観を作ってしまうので、思わず引き込まれて落語を見続けてしまいます。
落語の演目も落語家も、人それぞれに好みがあります。
まずは、その手始めに見ていただければと思います。