4年に一度の危機!サバクトビバッタは日本に来るのか?

理科の自由研究

昆虫好きのくろーるです。

口は災いの元ということわざがあります。

不用意な一言が、トラブルになることを指します。

でも、口が無くては身体を維持するために食べ物を食べることができません。

その食べ物が無くなってしまったら?

世界的にバッタによる農作物の被害が報告されています。

その主な原因となっているバッタが、サバクトビバッタです。

4年に一度の頻度で大繁殖し、大きな食料被害を出しているのを知っているでしょうか?

アフリカを中心に深刻な食料被害を出してきたサバクトビバッタ。

このサバクトビバッタの日本上陸が危険視されています。

サバクトビバッタの日本上陸はあり得るのか?をシュミレーションしてみました。

サバクトビバッタの脅威を簡単にまとめ

日本の大型バッタといえばトノサマバッタを思い浮かべる人も多いでしょう。

サバクトビバッタの大きさは、トノサマバッタを一回り小さくしたイメージと思われます。

写真やテレビでしか見たことはありませんが、大型バッタとしては十分な大きさです。

サバクトビバッタの主な分布は、

・サハラ砂漠を中心としたアフリカ大陸北部

・アラビア半島

・イランからインド

乾燥していて高温な地域といえます。

その一方で、寒い地域では生きることができないところは、昆虫らしいところ。

・アトラス山脈(モロッコ・アルジェリア境界)

・ヒマラヤ山脈(インド・中国境界)

・ヒンドゥークシュ山脈(パキスタン・アフガニスタン境界)

を越えた記録はありません。

これは山脈の標高が高くなると、温度が低いために飛ぶことができなくなるためと考えられます。

また、中央アフリカから南部にも生息をしていません。

これは、高温多湿を嫌う傾向があると考えられます。

普段は単体で生息しており、体の色も緑色をしています。

この状態を「孤独相」と呼び、サバクトビバッタを警戒するような状況ではありません。

しかし、草地が減るとサバクトビバッタは餌を求めて徐々に集団になり始めます。

集団になったサバクトビバッタの中で生まれた幼虫バッタは、色が茶色や黄色くなり、また羽が体長より長くなります。

長距離を飛ぶための体型に変化するのです。

このサバクトビバッタの群れは、餌を求めて移動を始めます。

1日の移動距離は130~250㎞といわれますが、風に乗って移動もできるため、さらに長い距離を移動することもできます。

移動した先では、野生の草木だけではなく、小麦やトウモロコシなどあらゆる農作物を喰い荒らすため、多くの食料被害を発生させています。

比較的小さな群れでも4000~8000万匹のサバクトビバッタがおり、1日に約3500万人分に相当する食料を食べるといわれています。

主な対策としては、殺虫剤の散布になりますが、目覚ましい効果を発揮できない点に問題があります。

その原因としては、

・サバクトビバッタの移動が速く、また広範囲のため、対策が遅れてしまう。

・被害国は財政的に豊かではないため、殺虫剤がストック不足で足りなくなる。

国連を通した世界的な援助を必要としています。

そのため、サバクトビバッタの大繁殖を収束させるには、天候や季節の変化に頼るところも多いということが現実です。

サバクトビバッタの現在の被害

今年のサバクトビバッタの大繁殖は、ケニア・エチオピア・ソマリアを中心とした東アフリカで、2019年に発生しています。

すでに、3,000万人から4,000万人分の食料が失われたと考えられます。

さらに、サバクトビバッタの群れは、紅海を超えてアラビア半島に侵入しました。

ソマリアと対峙した位置になるイエメンは、現在、内戦中です。

内戦のために食料事情が悪いところへ、サバクトビバッタの襲来を受け、深刻な飢餓状況にあるとされています。

また、サバクトビバッタの駆除も内戦のために思うように進まず、被害が拡大していると考えられます。

さらに、ペルシャ湾を越えてイランに襲来したサバクトビバッタの群れは、そのままパキスタン・インドと移動しています。

モンスーンの時期と重なったパキスタン・インドでは、さらに、この地域でサバクトビバッタが大繁殖をしています。

東アフリカからインドにまで至る地域で、大きな被害が出ていることで、食料不足が心配されています。

サバクトビバッタによる深刻な食糧被害が、あらたな紛争を引き起こすことも心配されているのです。

ヒマラヤ山脈は越えられない?日本に来ない説の根拠

サバクトビバッタは、飛ぶ距離が長く、広範囲に群れとなるため、対策が難しいと考えられます。

日本へ渡ってくることになると、米や麦・野菜などへの大きな被害は免れません。

しかし、サバクトビバッタが日本へ来る可能性はほとんど無いと考えられています。

その根拠となるのは、

・ヒマラヤ山脈を越えられない

ヒマラヤ山脈は、8,000m級の山々が連なり、山頂部は雪も溶けない低温地帯です。

渡り鳥でも、ヒマラヤ山脈を越えるものは一部しかいません。

ましてや、体温調整のできない昆虫であるサバクトビバッタは、低温によって飛び越えることはできません。

そのため、日本へ来るどころか中国への侵入さえ不可能ということです。

では、サバクトビバッタが日本へ来ることはありえないのでしょうか。

ヒアリにセアカゴケグモも!外来昆虫の日本侵入経路

日本国内へはすでに多くの外来生物が侵入し、日本に昔からいる在来生物へ影響を与えています。

しかし、そのほとんどはペットやコレクターによる日本への持ち込みによるものでした。

ところが、最近、日本へ来る外来昆虫が話題になったことを覚えているでしょうか。

セアカゴケグモ

1995年に大阪で発見されました。

オーストラリア原産の小型の有毒クモで、黒い体色に背中の赤い模様が特徴です。

噛まれると神経毒を相手の体内に注入します。

人間にとっては強い毒ではありませんが、オーストラリアではアナフラキシーショックによる死亡例もあります。

ヒアリ

2017年に神戸港で発見され、その後、国内6都府県で発見され話題になりました。

南米原産のアリで、噛まれたときの毒によるアレルギー反応によって死亡する例もあります。

アメリカや中国など多くの国でも外来昆虫として指定されています。

セアカゴケグモもヒアリも、いずれも、貨物船のコンテナに乗って日本へやって来ました。

グローバル社会になり、多くの海外製品が飛行機や船で輸入されています。

これらの外国昆虫は、海外からの荷物とともにやってきます。

日本の検疫体制は、とても厳しいため、大抵の外来生物はチェックされています。

それでも、わずかな隙から、日本への侵入を許している面もあります。

サバクトビバッタも、セアカゴケグモやヒアリ同様に、日本へ来る可能性は否定できません。

侵入したなら繁殖するのは簡単?日本のバッタ被害の例

仮に、サバクトビバッタが検疫の隙をついて、日本に侵入したとしましょう。

しかし、セアカゴケグモやヒアリと違って、サバクトビバッタは、1匹ではただのバッタに過ぎません。

餌が不足して群れを作る食性環境と雨によって大繁殖する条件が必要です。

温暖な気候とバッタにとっては豊富な食糧のある日本の自然環境では、サバクトビバッタは群れにならないかもしれません。

ですが、過去には同じようにバッタの大発生が日本でも起こっているのです。

明治初期のトノサマバッタの大量発生

北海道の十勝平野を中心に明治初期にトノサマバッタが大発生したことがありました。

台風によって起きた洪水により、平野のススキなどが流され、餌が少ない広い平地が出来上がりました。

餌不足により群れとなったトノサマバッタは、サバクトビバッタと同じように集団で移動を始めたのです。

当時の十勝平野は、今のような農業地帯では無かったため、農作物の被害は少なかったようです。

一方で開拓民の家の障子まで食い尽くしたという記録があります。

また、十勝平野で発生したトノサマバッタの群れは、日高山脈を越えて、現在の函館の近くまで移動しています。

その距離はおよそ400Kmにもなります。

本州への被害を考えて明治政府は、軍艦を北海道に派遣し、大砲でトノサマバッタを追い払ったといいます。

北海道でのトノサマバッタ被害については、アイヌの財宝を巡る冒険譚で人気の「ゴールデンカムイ第12巻」で詳しく紹介されています。

関西国際空港でのトノサマバッタの大量発生

2007年の関西国際空港開港直前に、敷地内トノサマバッタが大量発生しました。

広い敷地に餌の少ない状況ができたため、長距離を飛ぶことのできる群生相になったことが確認されています。

3,800万匹にまで増加したトノサマバッタでしたが、殺虫剤散布による駆除と、季節性のカビによりその以上の被害を出さずに終わりました。

その他にも、沖縄県南大東島や鹿児島県馬毛島でもトノサマバッタの集団発生は起きています。

最近発生したトノサマバッタの集団は、隔離された地域で起きたため、殺虫剤の散布に効果を発揮しました。

そのため、長距離の移動を始める前に食い止めています。

でも、この過去の出来事は、日本でも簡単にバッタの群れが発生することを意味しています。

日本に侵入したサバクトビバッタも群れを作ることができることを証明しているのです。

南米・中国でも確認されている!今年はバッタの当たり年!?

サバクトビバッタの被害はアフリカからインドまで達していますが、その他の地域でもバッタの大量発生が報道されています。

今年は南米パラグアイで発生した大量のバッタが、アルゼンチンにまで達しているのです。

この南米で発生したバッタの大量発生は、サバクトビバッタと同種だといわれています。

1986年に起きたサバクトビバッタの大量発生のときに、大西洋を越えてカリブ諸島まで移動したものが、一部南部へ渡ったもののようです。

また、あまり報道されていませんが中国でもバッタの大量発生が起きています。

中国のものはサバクトビバッタかどうかはわかっていません。

記事を総合するには、おそらくトノサマバッタではないかと思われます。

中国では、殷の時代からバッタによる食料被害が記録されており、「蝗害(こうがい)」と呼んでいました。

皇帝の政治が良くないときに起きる災害のひとつとされています。

全世界的に、今年はバッタの大量発生が起きている様子です。

サバクトビバッタの大量発生は、おおむね4年に1度の割合といわれます。

今年、日本にサバクトビバッタが侵入してきても、今年中の大発生はないでしょう。

しかし、4年後、日本に定着したサバクトビバッタが空を飛び回る日が来るかもしれません。

サバクトビバッタ研究の第一人は日本人!?

今年になって日本でもサバクトビバッタの話題を見かけるようになりました。

私がサバクトビバッタのことを知ったのは、前野ウルド浩太郎先生の著書「バッタを倒しにアフリカへ」を読んだからです。

昆虫好きの息子に影響されていた当時、奇抜な格好をした前野先生の表紙と読みやすそうなタイトルに惹かれました。

先にも書きましたが、サバクトビバッタの駆除には、被害に合っているアフリカ諸国では、大変に苦労をしています。

相手が生物であるため、動きが予想しにくいところがあるためです。

前野先生は、殺虫剤を使わずに、昆虫の行動を研究することで、サバクトビバッタの駆除の方法を探っています。

研究は、まだ道半ばです。

サバクトビバッタの報道を見るたびに、前野先生の研究成果が活かされることを願っています。

もし、日本でサバクトビバッタが大量発生しても、前野先生の研究成果を活かして駆除もできるのでは?考えたりします。

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